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■サクラサク日に。2

◇実力試験が近づいてきた。我が天文気象部では、中間、期末、実力と、それぞれ試験の1週間前は部活を休みとし、部室を開放して勉強会を開くことにしていた。自分が過去に受けてきた問題を、後輩たちに教えるのだ。いわゆる試験対策ということになってしまうわけではあるけれど、それを理由に後輩たちと普段より多く、普段より近くで話ができることが、自分にとっては魅力だった。勉強をがんばるのは、将来の夢を叶えるため、というのが一番の理由であるのはもちろんだけど、この会で多くの話をできるようにするため、という動機も大きかった。クラスも、学年も、性別も、全く関係なく話せるのだから。後輩たちもよく質問してくれたし、自分も喜んでそれに答えた。もちろん、その子にも。

◇実力試験の採点が終わるとその結果は大きく張り出され、校内はちょっとしたお祭りムードに包まれる。自分の名前があるかないかなど、それがそれほど重要なことなのかと、今考えれば当時の自分に問いたくもなる。けれど、その時の自分たちにとっては、それが全てだった。少なくとも、大きな部分を占めていた。学生とはそう言うものだろう。自分の名前も、友人たちの名前も、その子の名前も、張り出された紙の中を隅から隅まで探した。あれば喜び、なければ次こそはと決意を新たにし、いずれにしても次なる実力試験に向けて、頭も心も準備を始めた。

◇そして、次の勉強会がやってくる。自分自身の出題範囲は、もちろん下の学年とは違う。けれど、下の学年の出題範囲も含めて、必死に勉強した。そうしなければ、後輩たちの質問に答えられないではないか。せっかくの会話の機会が減ってしまうではないか。まったく困ったものだ、と頭の隅っこで軽く苦笑してから、机に向かうのが日課となっていた。

◇漁師をしていた祖父は、常に天気のことを気にしていた。祖父の持つ小さな漁船に乗り、陸から少し離れた小さな島へ連れて行ってもらったり、シイラ釣りを教えてもらったりするのが、子供の頃の大きな楽しみだった。自分を含め、祖父の孫3人は、この船で沖へ出て、海の中へエイヤッと投げ出されて泳ぎを覚えた。なんとも荒々しい指導ではあるけれど、漁師の子とはそういうものだろう。おじいちゃん子だった自分は、その祖父の膝の上で、テレビ画面に映し出される天気図や衛星雲画像を、なんとも不思議な気持ちで見ていた。こんなものを見ておじいちゃんは天気がわかるのか。そして、こんなものがおじいちゃんの役に立っているのか。不思議な気持ちは、夢に変わった。よし、将来はお天気おじさんになろう。

◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇

■春の嵐が幾つもやってくる。あと幾つかの嵐が通り過ぎると、冬は完全にその姿を隠してしまうだろう。ファックスや電子情報として送られてくる天気予報の参考資料を眺めながら、春が近いことを実感している。上空の寒気も、もう関東までは降りてこないようだ。風で電車が止まることはあるかもしれないけれど、雪で大混乱になることは、もうないだろう。春は、そのすぐ先までやってきている。

■普段は忙しさの中で忘れてしまっていることがある。自分は、確かにあの頃の夢を叶えたのだ。思い描いていた通りとはいかないかもしれないけれど、いま、こうして天気予報に携わる仕事をしている。


◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇ ◇◇◇


◇その子にも夢があった。弁護士になるという夢だ。お互いの夢を語っては、がんばろうねと励まし合った。その子は文系、自分は理系。もちろん目指すもの自体は異なるし、勉強すべき分野も違う。けれど、そんなことは全く関係なかった。二人とも、夢を持っている。その夢を語り合える。それだけで充分だった。弁護士になるには、司法試験をパスしなければならない。とても狭き門だ。進学雑誌によれば、司法試験に強い大学は幾つかあり、それなりに難易度は高い。もちろんそれらの大学に行かないと弁護士になれないという訳ではない。けれど、高校生だ、なるべくならそういう大学に行きたいと思うのは、当たり前のことだろう。

◇自分の夢は、お天気おじさん。天気予報に関わる仕事がしたい。その想いを叶えるひとつのステップとして、大学は気象学を学べるところに行きたいと考えていた。裕福とは言えない家庭事情を考えると、私立には行けない。気象学自体、それほどメジャーな学問ではないから、志望校は限られてくる。その幾つかの候補の中から、第一志望を気象大学校に決めた。世の中にほとんど知られていないであろうこの大学は、正確には文部省管轄の大学ではなく、気象庁が管理する准大学というものだ。防衛大学校の卒業式がニュースで時々取り上げられるが、それの気象庁バージョン、とでも思えばいいだろう。ここに入ることができれば、身分は国家公務員三種となり、学生でありながら公務員、勉強しながら給料がもらえるのだ。これなら、親にも負担をかけずに済む。

◇お互いの夢を語り合ううちに、ひとつの約束をした。もし自分が志望校に合格したら、お気に入りのコートをプレゼントする。そう、兄からもらったコートを、だ。自分自身でずっと着ていこうと思っていたそのコートは、この子にならあげられる、いや、この子にあげたい。そう思った。そう思っては、高校生なりに、ちょっとしたヒロイズムを味わっていたのだろう。


…続く
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非公開コメント

あぅっ、青春ですね。
今夜はおもひでじゃなくて、涙がぽろぽろです。
涙が止まりません。バスタオル、バスタオル。
その後、ぴ。さんはどうなってしまうのでしょうか?
きっ、気になる…。あうっ。
来週、どうなるんだろう??

ぴ。さんってホント実直な方ですね。

PS
私もちびまる子ちゃんより好きですよ。
田舎に泊まろう!よりも好きです(笑)

>おもひでぽろぽろさん
ありがとうございます~。
なんていうか、相当センチメンタルに書いてしまっているので、ホントよりも
かなりおおげさに書いちゃってるところもあると思います。。。

ってか、今回の、少し長過ぎますね。
読みづらかったかもしれず、すみませんでした。
もうちょっと、ちゃんとまとめられる力があればいいのですけどね。
よーし、がんばるぞー!
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